第6章 他校生とのお付き合い
仮免試験までの訓練期間。
は、クラスメート達にその個性の全貌を告げず、見せることもしようとはしなかった。
自分の個性をはぐらかし。
ぼやかして、煙に巻く。
そんな彼女の、個性を隠したがる自信なさげな態度を見て、1年A組の生徒たちの中では、一つの推論が持ち上がっていた。
の個性は、「大したことない」んじゃないのかと。
『カルラ』
≪承知した≫
呼応した火の鳥が、の瞳へと飛び込んだ。
は体にまとっていた白い炎を自分の両足首へと凝縮させ、両足の踵に、揺らめく大きな翼を形作った。
そして、瞬く間にその羽で受験者たちの頭上宙高くへと舞い上がりーーー
急降下した。
「わぁあ来るぞ!みんな構えろ!!」
「誰か撃ち落とせ!」
頭上から迫り来るの姿に、数名の他校生が自分の視線を上空へと引き上げ、迎え撃とうとする姿勢を見せた。
その重心の変化を確認したは、「わざと」、視認されるレベルまで加減していた飛行速度を急加速する。
「…はっや…」
を視界から見失い、呆気に取られていた一人の男子生徒が、いつの間にかすぐ隣の地面へと降り立っていたに足を蹴り飛ばされた。
彼が地面に倒れ込むまでの一瞬。
はまるで瞬間移動を繰り返すようなスピードで彼の周りを飛び回り、ボールを持った手で、相手の身体に取り付けられているターゲットに打撃を加えた。
足払いから撃破まで、その襲撃時間はわずか1秒。
倒れた受験者の数歩先に立っている仲間達は、惨状を目に映すことがやっとで、身体がついていかない。
と視線を交わした一人の生徒が、顔に恐怖を滲ませた。
はその表情を見て、冷たく笑った。
<通過者は、控室へ移動してください>
が2人目のターゲットを撃破してから10秒後。
彼女が身体に取り付けていたターゲットから、そんなアナウンスが聞こえてきた。
『……もう少し、減らしたかったな』
そう呟く彼女にちょうど脱落させられそうになっていた15人目の標的は、緊張で止まっていた呼吸を再開させ、その場に座り込んだ。