第45章 イカロスの翼
「極秘資料なので、各自一読後、質問事項があればまとめて聞いてください」
そんなに簡単な説明で、警察は蛇腔病院と群訝山荘に集まったプロヒーローの前線部隊に一枚の紙を回覧した。
裏切り者のヒーロー名が羅列されたその紙を、一人一人が一読し、言葉を発さずに飲み込んでは次の仲間へと資料を渡す。
蛇腔病院側では、相澤が。
群訝山荘側では、天喰が、紙を握り締め、「…嘘だろ」と呟いた。
「…この資料、誰が作成したんです。全て確実なんですか」
「イレイザー、誤りはない。機密情報の出所は伝えられない」
「あ、誤りはないって……だってここに…」
「イレイザー、マイク。「彼女」はこちら側にはいない。もう一方のチームに任せてください」
これは、公安からの正式通知です。
目を見開いたまま、回覧資料を手放そうとしない相澤を見て、塚内がそう言った。
一方、群訝山荘側では。
「サンイーター、どないした!」
「……嘘だ、こんなの間違いだ…」
「どうして、ここに、さんの名前があるんだ…!!」
その日。
ヒーロー達は、全国約11万人にものぼる解放戦線構成員を、一網打尽にする計画を実行した。
戦闘地点は全国数十ヵ所に登り、その中でも一際人員を必要としたのは、解放戦線幹部が集まる「群訝山荘」と、脳無、そして死柄木が匿われているとされている「蛇腔病院」。
雄英からは数名のインターン生が全線部隊に選抜され、多くのインターン生達は市外で後方支援に回っている。
「、どこの部隊なのかな?」
「インターン先からそのまま合流してんだろ?なんでお前ら、一緒じゃないんだよ」
市外の一角。
市民の誘導部隊に合流していた緑谷、爆豪、轟に、何も知らないクラスメート達が問いかける。
「………うん」
「いや、緑谷、うんじゃなくて…」
食い下がろうとした峰田が、3人の顔を見て、驚愕した。
3人は、今朝方。
エンデヴァーから、ことの次第を聞かされたばかりだった。
歯を食いしばって。
何かを堪えているような3人の表情を見上げて。
峰田は閉口した。