第45章 イカロスの翼
「君の名前考えた」
『…名前?』
君と、二人で暮らし始めて。
ある朝、君がそんなことを言った。
「ヒーロー名!ウィングヒーロー、フェニックスってどう?」
コーヒーに砂糖をたくさん入れながら、寝不足の目を擦って、君が言う。
いつも、君は疲れているのに。
必ず私と食事を共にした。
『ウィングヒーローはキミと被ってる』
「被っててほしいんだ。翼は片翼じゃ飛べない。二つ必要だから。ウィングヒーローも二人。君と俺で、二人で一つ。どうかな!よくない?」
あ、コーヒー飲む?と、聞いてくれた君は、既に二人分のマグカップにコーヒーと砂糖を同じだけ放り込んでいた。
『フェニックスって聞いたことある』
「昔一緒に読んだ本に書いてあったよ。神話で語られる火の鳥で、不死鳥なんだ。かっこよくない?自らの死期が近づくと、自身の身体を灰にして、また雛鳥に戻る」
『…死なないの?』
「そう。強い」
君にピッタリだ、と。
そんな笑顔を向けてくるから。
少し仰々しいような気がしていたけど。
まぁ、いいか、と思った。
どうして。
こんな日のことを夢に見たのだろう。
忘れていたわけでもないのに。
どうして。
今日はこんなに。
君の声が聞きたいんだろう。
「フェニックス!久しぶりだね。今日はインターンじゃないの?」
桜が舞い散る山荘で。
はホークスに声をかけられた。
「三ヶ月ぶり?に会うのかな!よければ、話をしたい。定例会議の前に、少しいいかな」
『…久しぶり』
「トゥワイスと会議の前に、解放戦線のおさらいをしようって勉強会をしてて。君にも来てほしいんだ」
『……3人で?いいけど、コーヒー買ってきていいかな』
「うん、君の解説の方がトゥワイスはわかりやすいみたいだから」
さぁ、入って、と。
ホークスがトゥワイスの待つ山荘の談話室へ、彼女を招き入れた。
その日。
街からヒーローが消えた。