第44章 君は友達
冷静さを取り戻したように、エンデヴァーが問いかける。
焦凍以外の貴様らのことを教えろ。
そんな物言いに、また焦凍がムッとした。
緑谷、爆豪、それぞれ事細かに現状の課題を述べる中。
出会い頭にエンデヴァーにつっかかられていたは、人一倍手短に答えた。
『……自分のことはどうだっていい。自分が誰かに、渡せるものがあるのなら、渡したいと思う』
「なんだ、意味がわからんぞ!!」
「なんでにだけあたりが強ぇんだ、いい加減にしろよ」
「しかしだな焦凍!!だがしかしだ焦凍!!」
「うるせぇ」
「訳わかんねぇこと言ってんなよエコヒイキ!誰がお前に誰も勝てねぇだ、勝ったわ!!」
『何ヶ月前の話。もうキミは私に勝てないよ』
爆豪がに飛びかかろうとするのを、緑谷が仲裁に入った。
『サンドバッグでいい。この三人の、力になりたい』
緑谷と、爆豪、轟がを見つめた。
エンデヴァーと彼女の間で、何か。
予想のつかない何か、大切な情報がやりとりされていることに気づいていても、話の全容が掴めない。
フン!と盛大に鼻を鳴らしたエンデヴァーが、ヒーロー候補生たちに背を向けた。
「俺も、いいか」
「焦凍は赫灼の習得だろう!」
轟が未だ、エンデヴァーから庇うようにを背に隠したまま、自身の左腕を見ながら発言する。
「俺はヒーローのひよっ子としてヒーローに足る人間になる為に、自分の意志でここに来た。俺がおまえを利用しに来たんだ。都合良くてわりィなNo.1」
友だちの前で、ああいう親子面はやめてくれ。
息子が言う「友だち」に。
彼の背に庇う少女が含まれていることを悟って、エンデヴァーが表情を曇らせた。
(……自ら来てくれたことで、いくらかでも心を開いてくれたかと…俺は何と愚かな勘違いを…!)
言いたいことなら山ほどある。
聞きたいことも、山ほど。
しかし。
今は口を閉ざすしかないと、エンデヴァーは結論づけた。
「…ああ。ヒーローとして、お前たちを見る」