第38章 夢の一端
「見てよこのアンケート!文化祭でとったんだけどさァーア!A組ライブとB組超ハイクオリティ演劇どちらがよかったか!見える!?」
ヒーロー基礎学、合同訓練。
A組と合流するや否や、物間がいつものように絡んできた。
本日は12月下旬。
まもなく冬休みを迎えるこの時期に、ヒーロー科はきたる来年のインターンへ向けて、訓練を行っていた。
「初めての合同訓練!!僕らが勝キュ!!」
「黙れ」
相澤が物間の首を捕縛布で捕らえた。
手短に言うぞ、と前置きをした相澤が普通科の心操を紹介し、本日の戦闘訓練の趣旨を述べていく。
「以上だ。質問がある奴は挙手」
「…先生。はどうしたんですか」
「外出先でトラブった。遅刻してくるそうだ。他」
相澤の返答を聞き、轟はぽかんとして、挙手した手を下ろした。
あまりにも不足している情報に、身に覚えがある。
が転入してきた、と紹介した時も。
相澤はさっさと話題を終わらせて、生徒たちの口を強引に閉じていた。
同じ関係なのだろうと察し、轟が大人しく、相澤の意図を汲み取ることにした。
「なんだ、が休みか!それはいい、ひとチーム訓練にならなさそうだと危惧してたところだ」
「ブラド、言い方を考えろ。…この訓練には間に合わないと聞いてる。チーム分けしていくぞ」
他クラスの担任にそこまで言わせる実力者の不在。
B組の中には、何名かホッとした顔をしている生徒たちがいた。
「じゃあ早速やりましょうかね」
「戦闘訓練!!」
(……なんだ、この違和感)
A組とB組、合わせて40名。
そこに普通科の心操が加わり、歪なバランスになっているはずなのに。
なぜかしっくり物事が進んでいく。
まるで、という人間が初めからいなかったかのように。
時間がゆっくりと進んでいく。
(ーーーあいつ、今頃何してるんだ)
まるで。
おかしな点など一つもなく。
いつも通りに進む授業の空気が。
「……早く帰ってこいよ」
轟は、たまらなく嫌だった。