第37章 かごめかごめ
『思い出すって、何を』
彼女が声を発した。
荼毘は彼女に近づくのを静止して、不愉快そうにため息をついた。
「自分で考えろ」
『…覚えてない。事故にあって、頭を打った。そこからしか思い出せない』
「…事故?何年前の話してる」
『7年か、8年』
「博多で?」
げんなりとしていた荼毘が、跳ねるように上半身を起こして、その話題に食いついてきた。
記憶にある事故現場を言い当てた荼毘を訝しみながら、がこくりと頷いた。
彼は目を丸くして、頭を抱えて、黙り込んでしまった。
『…荼毘?』
「……事故……なるほど、だからか」
だから、おまえ。
荼毘はそう呟いて、はぁぁ、とため息をついた。
何かを知っている様子の荼毘に釣られて、も上半身を起こし、彼を心配そうに見つめた。
その彼女の表情を眺めていた荼毘は。
笑みを浮かべて、彼女を抱き寄せた。
「再会できて嬉しいよ。お前は俺の原点だから…!半信半疑だったけど、そうかよ。その瞳、見間違うわけねぇよな」
『…待って、何のことかわからない』
「安心しろよ。今度は俺がおまえを守ってやるから。社会のゴミを一掃しよう!」
だから安心して笑ってろ、と。
荼毘が楽しげに笑い、力一杯の身体を抱きしめた。
軋む身体にが咳き込んでも、嬉しさが込み上げてきた荼毘は、彼女の身体を離さない。
『……苦しい…離して』
ようやく離れたかと思えば。
荼毘は彼女を見つめて言った。
「俺がおまえを幸せにしてやるよ…!なぁ、「荼毘」!」
彼は
確かにを、そう呼んだ。
『ーーー…………え?』