第31章 斜陽
最近、また夢を見る。
「素晴らしい」
「おめでとう、」
誰の言葉かわからない。
もう忘れてしまったはずの誰かのその声を、夢の中で思い出す。
「キミは」
「生まれ変わったんだ」
夢を見るたびに。
断片的に。
上書きして削除されたはずの記憶が思い起こされる。
母の泣きじゃくる声が遠くから聞こえる。
泣き続けている母の声。
熱い熱いと苦しんでいる。
「やめて、あつい!!やめて!!」
煩いくらいに反響している母の声。
真っ暗闇な空間に立ち尽くす、幼い「私」の足元で。
横たわった何かが燃えている。
「私」は白炎を見下ろして、その顔に笑みを浮かべている。
(ーーーいや、あれは私じゃない)
あの子どもは私じゃない。
あんな化け物は知らない。
私じゃない。
私は知らない。
あんなーーーー
≪お前はいつも私を否定する≫
≪いつだって私はお前で≫
≪いつまでもお前は私なのに≫
「お前、さては誰かを燃やしたな?」
『ーーー。』
いつも、そこで目が覚める。
見慣れた部屋の光景に、ようやく呼吸を再開してから。
私は早鐘を打つ胸を撫で下ろす。