第29章 分岐点
1年A組の文化祭出し物が決定した翌日。
あの作戦に関わった、相澤、通形、緑谷、の四人で壊理のもとへと訪れた。
「ずっとね、熱でてたときもね、考えていたの」
助けてくれた時のこと。
そう言って、小さな小さな女の子はほそぼそと話し始めた。
「お名前がわからなかったの。ルミリオンさんしかわからなくて知りたかったの」
「緑谷出久だよ!ヒーロー名はデク!えっと…デクの方が短くて覚えやすいかな」
病院の大きすぎるベットの上で正座している壊理。
すぐ傍のパイプ椅子から話しかけている緑谷、通形とは一線を引いて、病室の扉近くで様子を見ている相澤と、。
ベットの近くで話していた緑谷の自己紹介が終わり、なぜか壊理と距離を取っているように見えるの方を緑谷と通形が振り返った。
「ヘイヘイ!恥ずかしがり屋さんかな?どうしてそんな遠くにいるんだい!」
『…怖がらせちゃいけないと思って』
(…あ、そうか)
彼女の発言を聞き、緑谷ははっとした。
思い当たるのは、あの光景。
緑谷は、が治崎の身体を何度も何度も部分的に消滅させ、断末魔をあげさせ続けていたあの状況を、壊理が思い起こさないように配慮しているのだろうとわかった。
と、壊理。
二人の表情を何度も何度も緑谷が確認する。
「えっと…さんごめん」
緑谷がに深々と前もって謝罪し、言った。
「壊理ちゃん、あのお姉ちゃん怖くないよ。大丈夫だから、お姉ちゃんも近くで自己紹介するね」
『……。』
(ごめん!!さん!!)
緑谷は、まるで友人の身体に、ゆっくりとナイフで鋭利な傷をつけているような罪悪感にむしばまれる。
は一瞬だけ死んだ魚のような眼をした後、溜息をついて、ゆっくりと壊理のそばへと寄ってきた。
『…こんにちは、エリちゃん』
視界の端で、通形がSmileを顔面に貼り付けて主張してくる。
顔が、笑っていないよ。スマイルスマイル!
大方そう言いたいのだろう。
子ども相手にも笑みを浮かべないの様子を、はらはらとして見守る緑谷。