第24章 現代病
やめなさい。
ナイトアイが声を振り絞る。
貴様は、と。
言って。
彼は吐血した。
それでものジャケットの胸倉をつかんだまま。
言った。
「…貴様は、ヒーローになるんだろう…!!」
血を吐きながら、彼は私にそう言った。
ボタ、ボタと。
彼の鮮血が私のジャケットに色を移して、湿らせた。
もう、消える命を無駄に燃やして。
なぜ、そんなことを言うのだろう。
なぜ、許してくれないのだろう。
私はこんな「個性」をもっている。
私はあなたを守れたはず。
もっと早く。
あいつを焼いていれば。
何度でも。
焼き消していれば。
なのにどうして。
なぜ、ヒーローは。
『……ごめんなさい、ナイトアイ』
あぁ、どうして、貴方は
そんなに優しく、笑いかけてくれるのだろう
個性の使用をやめて。
治崎の方を振り返った。
コンクリートの濁流が彼女の身体を攫い、手近な壁へと叩きつける。
ゴツ、という衝突音と共に。
の視界は、色を失った。
医師の診断はシンプルなものだった。
頭がい骨骨折、右腕の激しい損傷、全身の打撲、複数個所の骨折。
医師と入れ替わり立ち代わり。
公安の人間が、私に通達を伝えに来た。
彼らの申告も、ひどくまたシンプルなものだった。
「この日を最後に、公安と君の関係を抹消する」
なぜですか、と問いかけることも。
抵抗の意思を態度で示すことも。
未だできない面会不可の状況にある重傷者に対し。
公安職員は述べた。
「今まで、ご苦労だった」