第24章 現代病
『静かに』
ぺち、と。
が緑谷の頭を左手で叩いた。
あまりにも力のないそのビンタに。
緑谷は一層瞳に動揺を浮かばせた。
『キミは落ち着きがない』
「ごごごごめん、僕のせいで…!早く止血しないと!!」
『…ッ…まったくだよ』
は、ドクドクと大量の血を流しながら、その場に座り込み、自身の身体の止血と、ぎりぎりの面積でぶら下がっている右腕がちぎれてしまわないように、固定をし始めた。
はやく戦いなさいよ、と。
まるで、痛みなど感じていないかのように、冷静に振る舞う彼女。
『みんな弱すぎる。だから命を賭けなきゃ戦えない。私もキミも。…個性さえ、まともに私が使えたら…ッ』
あんなやつ、と。
呟く彼女の顎先から、ポタ、ポタと。
汗が滴り落ちる。
「フェニックス、そっちへ行く!!」
『ナイトアイ来なくていい!その場で待機を』
「悲しい人生だったなルミリオン。壊理に…俺に関わらなければ、「個性」を永遠に失うこともなかった。病に罹ったままでいられた」
失っても尚。
粘ったその先の未来が。
「増援を巻き込み全員死ぬだけなんてな」
治崎の言葉の意味を悟り、ヒーロー達が息を殺した。
負傷したの方へと飛び込んでくる治崎を見て、緑谷が応戦した。
『…ッ…!』
が負傷したのは、あくまでも右腕のみ。
他の部位は軽傷で済んでいる。
それが不幸中の幸いといえるかは不明確だ。
片腕の激痛を抱えたまま、このオーバーホールという相手を捕縛しなければならない。
あくまでも。
ヒーローとして、任務をこなすなら。
「力と速さ、それだけだ…!」
緑谷の単調な攻撃が治崎に通らない。
戦闘経験の浅い緑谷が、治崎の動きを読み切れていないからだ。
アイアンソールを履いていなければ、何度も体を貫かれていてもおかしくない。
そんな死線ぎりぎりの戦いを見て、ナイトアイが歯を食いしばり、指示を出した。
「こいつの相手は私がする!貴様はルミリオンとエリちゃんを!!」
「…っ了解…!」
『ーーーーッ』
には
パワー系個性では決してない、ナイトアイの行く末が見えた。