第24章 現代病
ズタボロのルミリオン。
傷だらけのオーバーホール。
倒れ伏した構成員が2名と。
マントに包まった、小さな小さな女の子。
デクは壁を破壊したその勢いを殺さずに、治崎へと殴りかかる。
「ナイトアイ確保を!!」
「ーーーー…!」
イレイザーヘッドの言葉を聞き、ナイトアイが壊理とルミリオンのもとへと駆け出した。
「ルミリオンがここまで追いつめた!!このままたたみかけろ!!」
刻、一刻と。
治崎逮捕までの時間が、迫っている。
イレイザーヘッドの個性により、個性が使えない、治崎は。
声が嗄れるほどの大声で叫んだ。
「起きろクロノォ!!」
「ッデク、フェニックス!」
一秒、一瞬の出来事。
倒れていたはずの構成員のフードから、刃のようなものが飛び出して、相澤の腕を切りつけた。
「三人まとめて串刺しにしたつもりでしたが、さすがヒーローだ」
「ッ治崎!!」
『待ってデク、さがって!!』
スローモーションで倒れ込む相澤を見て、が危険を察知した。
緑谷が気づかず、が気づいた理由。
それはあまりにも、開きすぎている二人の現場経験の差が起因している。
『緑谷くん!!』
前へと飛び出した緑谷を引き戻そうと、コスチュームを引っ張った。
けれど。
もう遅かった。
「全て無駄だ!!」
瞬間。
治崎の手元からオーバーホールが発動した。
コンクリの棘が一瞬で地面に隆起し、その場にいた者の身体へと突き刺さる。
回避能力の高いナイトアイは、壊理と倒れたルミリオンをかばって、急所を避けた。
緑谷は、棘が突き刺さる瞬間。
にコスチュームを引っ張られ、後ろに引きずられた。
貫通はしないまでも、大きな打撃を腹部に受けた彼は、痛みに歪む、視界の中で。
重大なミスを犯したことに気づく。
「…ッ…さ…」
『…大丈夫』
緑谷の隣に、かろうじて立っているように見える彼女の右腕には。
治崎が生み出した固い棘が深々と、突き刺さっている。
磔になっている彼女はもう一度、大丈夫、と。
固い棘を、自身の個性で一瞬で消し去ってしまってから、うわ言のように繰り返す。
彼女の惨状を見て。
緑谷が、我を失ったように叫んだ。