第23章 かごの中の鳥
ホームレスが集まる高架下の隅。
遠くの公園から聞こえてくる夕方5時のチャイムが鳴ると。
彼女は帰り支度を始める。
「帰らなきゃ…帰りたくないけど…あ、今日の夜ご飯、もってこれるものあったら明日持ってくるね!だからまた明日も会おうね、約束だよ」
彼女が持ってきたおままごとの玩具を、二人で片付ける。
ちら、ちらと。
私の左腕の包帯を、彼女が物欲しそうに見つめてくるから。
まだ血が止まっていないその傷口を、彼女の前に差し出した。
「いいの!?」
せっかくかごの中に片付けたおままごとセットを全てひっくり返してしまってから。
彼女は私に飛びついて。
その左腕にしがみついた。
いいけど、私。
汚いから、あんまり口にしない方が良いよと。
嬉々として鮮血を貪るその子を窘めた。
「汚くないよ!すっごく綺麗だよ!」
チウチウさせてくれてありがとう、と。
汚れに塗れた私に向かって、彼女が血まみれになって笑いかけてくる。
「ありがとうね、かごめちゃん!」
遠くの公園で。
その日も変わらず。
日暮れを告げるチャイムが鳴っていた。