第20章 片道
「嫌じゃなければ、俺の寝室使いなよ」
夜が更けた時間帯。
彼女にそう提案した。
すると。
『…ベッド貸してくれるってこと?悪いよ、私はソファで寝る』
思った通り、そんな返事が返ってきた。
「なら、一緒のベッドで眠っても?」
だから俺は軽口を返した。
まるで何でもないことを口にしているかのような平静を装って。
でも彼女は、やっぱり。
『二人とも子どもじゃないんだから、シングルベッドは狭いよ』
そんな風に、うまく断ってこようとする。
俺は負けじと寝室の扉を開け放ち、これ見よがしに部屋の明かりをつけた。
「高額納税者を舐めないでほしいなぁ。ご覧あれ、うちのベッドはキングサイズ」
『ふふ、サイズの問題じゃないの。もう二人とも大人なの』
「なら、尚更断らないでほしいけど?大人な女性のキミとしては、こんな誘われ方は不本意だとでも?」
『百戦錬磨の大人の女性の中には、喜ぶ人もいるんじゃない?』
「他はどうだっていい、俺はキミの話をしてるんだよ」
『………。』
(……あー。…また…)
俺がいきすぎた好意をチラつかせると。
彼女は決まって、とても不安そうな顔をする。
昔から、いつもいつも。
彼女は俺の想いから目を逸らす。
そして俺は、いつもいつも。
『……ねぇ、ホークス』
俺は
「あー…えっと…冗談!冗談だって、やだなー」
俺は
キミを困らせまいと
自分の気持ちに蓋をする。