第18章 西へ東へ
九州へと向かう新幹線の中。
窓の外を流れていく夜道の景色をぼんやりと眺めて。
は、言葉を飲み込むほど驚いていた轟の顔と、遠くの座席からこちらをじっと見て、目を見開いていた爆豪の表情を思い起こしていた。
(……そりゃ…驚くよなぁ)
自分の背に残る古傷と、その上に上書きされ続けている「自分の個性の爆風による新しい傷」。
普通の高校生には、あまりにも刺激が強すぎることだろう。
古傷がついたのは子どもの頃。
新しい方の傷は、カルラという個性が「熱エネルギーの爆発」へと変容してから、既存の戦闘スタイルを変えるために出来た傷だ。
瞬間移動をする度に、その為に弾く自分の身体は悲鳴をあげる。
照日がその背を焦がすかのように、瞬間的な熱と、爆風が身体を襲う。
繰り返される刺激に背中の皮膚が耐えられず、裂傷となってしまうのだ。
(…こんなに痛んでるなんて、戦ってる間は分からなかった。アドレナリンって怖い)
昼に駆け寄ってきた女医は、公安お抱えの見知った顔だ。
任務のたびに身体を酷使してくるに、その度注意をしてくれる大人だった。
何度も何度も繰り返しお説教をさせられることに、流石に怒ったのだろうか。
昼食を控えたクラスメート達に、グロテスクな生傷を見せつけるなんて、案外彼女も大人気ないと思った。
(……痛い……)
もう、何十回。
何百回、こんなことを繰り返している。
「。おまえの瞬間移動を組み合わせた戦闘スタイルは、その度に身体にダメージを蓄積させている。その戦い方は合ってないんだよ。だからあんなに乱発するもんじゃない。…自己犠牲精神でそこまでやってるならまだ、話しようもあるが…」
仮免を終えた次の日。
担任は困り顔でため息をつきながら、私にそう言った。
「仮免の仮合格だとしても、おまえはまだ俺の生徒の中でダントツでドベの成績だ。まずは受け入れろ。もう他人で「できるかも」なんて曖昧な気持ちのまま試したりすんな。練習相手なら俺がなってやるから」
約束だぞ、と。
人生で初めての担任の先生は、そう言った。
なのに。
(…約束、簡単に破っちゃったな)