第17章 同族嫌悪
「クソみてえな気分だろ?見下してた相手に負けるなんてよ」
一進一退の攻防戦の末。
爆豪が彼女の額を掴んだ。
掌で爆発を起こす彼に「掴まえられる」ということは、戦闘を模したこの場では、降参せざるを得ないということだ。
先ほどのような不意打ちは一度しか効かない以上、この戦いの勝者は決まった。
『……見下してはいないよ』
「テメェ、「ただの高校生なんかに」っつったろ。その言い草が既に見下してんだよ」
『……自負があるから。でも見下してはいない』
「似たようなもんだろうが!」
『………あーぁ……』
彼女は爆豪に頭を鷲掴みにされたまま、ぽそりとため息をついた。
急にしおらしく落ち込み始めた彼女から爆豪が手を離したタイミングで、けたたましいアナウンスが鳴った。
<<えー、時間となりました!!勝った方も、負けた方も、最初の集合地点へお集まりください。>>
困った顔をしたまま、俯いている彼女がいつまでも歩き出さない。
爆豪がそのことに気付き、イライラとしながら振り返る。
「おい!はよ動けや、全員集まんねぇと話進まねぇだろ!!」
『……進むも何も…』
私の方は、もう、終わっちゃった。
彼女はそう言葉を返し、ゆっくりと歩き始める。
のろのろとしている彼女がようやく爆豪の隣に並んだところで、ブチィ、と彼の我慢が限界に達した。
「終わるわけねぇだろふざけてんのか、テメェは個性も使えねぇクソモブなんだから補習の対象から外れられるわけねぇんだよ!!!」
『……いやいや、そもそも個性もうまく使えないような人が仮免を持ってていい訳がないから、補習の対象から外れて、資格を失うって話だったでしょう』
「「仮免の仮発行」までしてる合格寄りの候補者を、不合格になんざ出来るわけねぇだろうが!そもそもこのお堅い国で、受験要項に記載がねェ「再試験」なんざ勝手に公的機関が設定できるわけねぇんだよ!」
この世間知らずが。
爆豪はそう吐き捨てて、さっさと先へと進んで行ってしまう。
呆然としているの肩が、後ろから軽く叩かれた。
「おつかれ」
『轟くん』
「午後、同じ講習場所だといいな」
轟と、が見つめ合う。
「不合格って言っとけば、みんな底力を見せる。だから良いデータが取れる。合理的虚偽ってやつなんだろ」