第16章 なりたかったもの
「スマーッシュ!スマーッシュ!!」
ガキの頃。
馬鹿みてェにオールマイトの技名を叫んで、発現した個性を力が続く限り使ってた。
毎日、毎日。
飽きもせず。
「スマーッシュ!…クソ、なんでこんな力しか出ねェんだ!スマーッシュ!!」
毎日、毎日。
声が枯れるまで叫び続けた。
それでも。
憧れには程遠い威力の力しか出せなくて。
悔しかった。
それと同時に。
自分の憧れた人は間違っちゃいなかったと、なぜか誇らしい気持ちになったりもした。
「っらァ!!!くたばれ!!!!」
「個性」を使う時。
オールマイトの掛け声を叫ばなくなったのは、いつだっけ。
まァいいや。
丸パクリなんざダセーし、そもそも。
威力が桁違いすぎる。
だから真似るのをやめたんだ。
憧れと、自分の差に気づいたから。
だから追いかけるって決めたんだ。
だから、追い越すって決めたんだ。
「どんだけピンチでも、最後は絶対勝つんだよなあ!」
なのに、何で
戦闘訓練でクソナードに負けた。
なんで
林間合宿でクソヴィランに捕まった。
その挙げ句
憧れの人の足を引っ張って、ヒーローとしての彼を終わらせた。
なァおい、テメェなんで
なんでだよ
なんで、こんなタイミングで
そんな桁違いの「個性」を持って、オレの目の前に現れた?
「……ッは……ゲホッ…!」
乾燥した周囲の空気を吸いこみ、咳き込んだ。
両腕の骨が悲鳴を上げている。
最大威力の爆破でも弾ききれなかった瓦礫が額をかすめ、それが強く脳を揺らしたせいか、視界がかすんで見えづらい。
「……っ…これがテメェの「精一杯」かよ、何が人に向けては打てねぇだ、小さすぎて笑えるな!!?」