第1章 切望
ページをめくれば、目の前に彼らがいる。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しんだり・・・
彼らと過ごした日々が蘇る。
短い、夢のような日々だった。
だけど、あの日々は決して夢なんかではなかった。
・・・夢だと思えたら良いのに。
いつもみたいに、二次元だって割りきれたら、叶わないって諦められたら楽なのに。
あの人から貰った、大切な品が、その証。
叶わぬ恋だと知りながら、密かに想いを寄せていた、あなたからの贈り物。
あの日々が真実であったと証明してくれている。
あまりにも綺麗で、つけるのが勿体ないと言った私に。
あなたは、着けないと士道不覚悟で切腹だと言って、私の手から奪い取り。
「似合ってる。」
優しく髪を撫でて、そう言ってくれたこと、今でも鮮明に覚えている。
ショーケースの中でキラキラ光る“それ”を、壊れないよう丁寧に手のひらに乗せ、優しく。
優しく優しく、親指でなぞり。
あの日、最後の日、私にしてくれたように。
「___、さん・・・・・・。」
あの人の名を、小さく呼んだ。
______会いたい。
今すぐに会って、
胸に溢れるこの気持ちを、伝えたい。
けれどそれは、叶わぬ願いで。
ページをめくれば、愛しいあの人が、剣をふるっている。
意地悪で、腹黒くて、いっつも一言多くて。
だけど、誰よりも仲間想いで。
どこまでも、剣にまっすぐな人。
雫で彼が滲んだ。
あの日、あなたは「泣くな、笑え」と言った。
最後くらい、嘘でもいいから笑ってくれ。
俺はあんたの笑った顔が好きだから。
あんたの泣き顔は思い出したくない。
そういってあなたは抱き締めて、たった一言、
「幸せになれ」と。
優しく笑みを浮かべて、私の背中を強く押した。
こんなことなら。
こんなに悲しい思いをするなら、
彼らと出会わなければ良かった。
こんなに辛い思いをするなら、
もっと早くに、この世界に戻っていればよかった。