第1章 嬴政(えいせい)×新人宮女
「華!ここだよ」
『は、はい!』
「この方の湯浴みと、着替えを手伝ってやってくれ」
そう軽く上官に言われ、思わず目を見開いてしまう。
連れて来られた一室には、同い年くらいの鋭い目つきの少年がいたからだ。
宮廷の宮女となって5日目。
他の優しい先輩宮女の皆さんのおかげで、なんとかやっていけているけど…
まさか、私のような新人が男性の湯浴みを…!?
「それじゃあ頼んだよ」
『え、じょ、上官!?』
あれこれ頭で考えている間に上官が出て行った扉はパタリと閉まってしまい、私がこれから湯浴みを手伝う少年を見つめる事しか出来ない。
血が付いて汚れてしまっている…どう、して?
「急にすまないな。政(せい)だ。」
『こ、こちらこそ、ぼーっとして申し訳ありません!
え、えっと…華です』
綺麗な、声…。
広めの部屋に響いた彼の声と、その真っ直ぐな瞳にぎゅっと心臓を鷲掴みにされる。
お、落ち着け…!
湯浴みのことは昨日教えてもらったし!
しっかりしないと!