第9章 バンドガール・ラバー【澤村大地】
「……っはぁ」
「名前がしたがってたヤツ」
「……だ、大地っ……」
「ちなみに俺も」
そっと触れているだけのキスを何秒も続け、息継ぎで口を開いた名前の肩を抱き寄せる。
「これが俺の『好き』の伝えかた」
「……カッコ良すぎかよ、大地」
肩を寄せ合って、手は恋人繋ぎをする。
絡んできた名前の細い指に感じる、指輪の感触。
そのまま手を上に引き上げ、名前の指にキスする。
続けて前髪、頬にも短いキスを落とせば、名前は顔を真っ赤にして俺を見上げた。
「大地って……意外と大胆だね」
「名前は意外と小心者って言ってたけど、人前で堂々と歌って告白までして……本当かよ?」
ニヤッと笑って、名前をからかう。
「ライブ前、手の平に『人』いっぱい書いたもん!」
「ははは!!旭かよ!」
名前の誕生日にはピアスでも指輪でも、好きそうな物を贈りたいと思う。
自称・小心者の名前を強く見せる為のものじゃ無く。
魅力的な名前を、より魅力的に見せてくれる為のものを。
“好き”の気持ちを込めて。
「その化粧、唇に付いちまったかな」
「シャツにもキスマーク付けてあげましょうか?」
「バーカ」
遠くのステージで後夜祭が盛り上がっていた。
恋人繋ぎをしたまま、俺と名前はステージの方へと向かった。
残り時間少ない、高校最後の文化祭を謳歌する為に。
END