第9章 バンドガール・ラバー【澤村大地】
「日向、問6の1つ目は?」
東京遠征の為、馬鹿4人が部室で勉強に励んでいたある日。
「なぁなぁ大地、スガ」
「何だよ、旭?」
「頼むっ!俺にも英語、教えてくれっ!!」
旭からの頼みで、俺たち3年も勉強会を始める事になった。
テスト1週間前の部活休止期間中、勉強会の為に集まった旭のクラスの教室で、俺は彼女に出会った。
「よろしくお願いしまーす!」
それが旭のクラスの、苗字 名前だ。
「苗字も英語分かんないらしくて……俺が今日お前らに教えてもらうって言ったら一緒に聞きたいって……。飛び入りだけど、大丈夫か?」
「ああ、俺たちは全然構わないよ?教えれば自分も勉強になるし」
「ありがとー、菅原くん!」
スガの言葉に、彼女は胸の前で手を組む。
その手には指輪、手首には少しごついブレスレットが揺れていた。
「苗字さんだよね?俺の名前知ってたんだ?」
「うん!イケメンだって有名だからね~」
耳にはピアスが光り、襟元が空いたシャツには指定のリボンが付けられていなかった。
俺の周りには絶対にいないタイプ。
顔は何度か見た事があったけど、進学クラスでは無いから被らないし、よく知らない子。
話す前の第一印象は、チャラチャラした子、だった。
「えっと……バレー部の主将クンだよね?」
「そうだよ。澤村だ」
「苗字 名前です!よろしくね」
ニコッと笑いかけられて、俺もひとまず営業スマイルを返す。