第8章 息をしていて。【菅原孝支】
「……でさぁ、旭のおみくじがさ」
一月一日 元旦。
春高本選間近の今日、澤村くん達との初詣を終えた孝ちゃんは私とデートをしてくれていた。
デートと言っても、私たちは付き合っている訳では無い。
只の仲の良い、幼馴染みだ。
私は近所に住む同級生の孝ちゃんの事が好きだ。
中学二年の頃からの、片想い。
一生懸命勉強して孝ちゃんと同じ烏野高校に入ったけど、最近周りの子が彼の事をかっこいいって言い出し始めたりして、正直焦る。
幸か不幸か、皆が彼氏だ彼女だと騒ぎだす年齢になっても、孝ちゃんの興味はバレーだけみたいだ。
孝ちゃんにとって私は只の“幼馴染み”で……
きっと“女の子”では無い。
彼の恋人はきっと、バレーボールなんだろうな。
孝ちゃんは髪が長い女の子が好きだと聞いた。
噂で、だけど。
だから私は今朝も変わらず、その為のロングヘアーにアイロンを綺麗にかける。
いつになっても切れないままの髪を鏡で見て、毎朝ため息が出る。