第6章 17歳の君が好き。【澤村大地】
「名前~?」
「……んー?」
親友であるミオからの声掛けに、私は生返事で返した。
「ぼーっとしちゃって。まぁた澤村に見惚れてたんでしょ?」
私の恋事情を知るミオ。
いつもならこんな冷やかしに赤面しそうだけど、今日の私は自分で言える程に冷静だった。
「今は違う。見惚れてたんじゃない……」
「え~?またまたぁ」
「澤村……部活、続けるみたい」
今朝スガちゃんから、昨日のIH予選でバレー部が負けたって聞いた。
すごくいい試合で、強豪校相手に惜敗したって。
この土日は、大学進学の為に通っている予備校の講義が入ってて、観に行けなかった事が心残りではあった。
澤村もスガちゃんも今日はずっと思い詰めてて、神妙な面持ちだ。
“俺は……まだやりてぇよ!! お前らと……まだバレーしてえ”
さっき教室のベランダから、澤村の大きな声が聞こえた。
私は偶然、澤村とスガちゃん、3組の東峰くんが話しているのを耳にしてしまった。
無意識に澤村をいつも目で追ってるから、すぐに気が付いて聞き耳を立てていたのだ。
今は昼休みだから周りはガヤガヤしていて、低くてよく通る澤村の声だけど、私以外は誰も気に留めてない様だった。