第4章 先生だって恋します。【澤村大地】
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それから澤村くんとは何も無く、お互いやるべき事に尽力する忙しい日々を送った。
それでも今日まで、澤村くんの事を忘れた日は1日も無い。
数ヶ月が経ち、春高も終わった。
今日は卒業式を迎えている。
卒業式が終わり、1・2年生は既に下校した。
多くの卒業生たちが謝恩会の会場へ向かっているなか、私は澤村くんに呼び出されている。
人の気配が無くなった廊下は、昼間の学校とは思えない位にシンとしていた。
「お忙しいところ、すいません」
「少しなら大丈夫」
「ありがとうございます」
澤村くんが姿勢を正して、口を開く。
「名前先生、俺……大学受かりました!昨日、合格通知が届いたんで名前先生へ1番に報告です!」
「本当!良かったぁー!!頑張ったね、合格おめでとう!!」
私は跳び跳ねて喜んだ。
「澤村くんなら大丈夫だと思ってたよ!本当におめでとう!」
「ありがとうございます!」
ひとしきり喜び合った後、再び視線が合い数秒の間が空く。
数ヶ月ぶりに澤村くんの目を間近でしっかり見ている。
吸い込まれてしまいそうな、真っ直ぐで澄んだ目を。
「名前先生、俺への気持ち、変わってない?」
「もちろん……待ってたよ」
澤村くんにきつく抱き締められる。
彼の大きな胸の中にすっぽりと入り、逞しい腕に包まれる幸福感。
人に見られるかもしれないとか、細かい事は今はどうでも良い。
澤村くんの心臓の鼓動が、私の耳にダイレクトに届く。
「待っててくれてありがとう、名前先生。ずっとこうしたかった」
「私も。大好き、大地くん」
私と大地くんは、初めて唇を重ねた。
待ち望んだこの瞬間を、そしてこれから訪れる2人の時間を祝福して。
END