第16章 ラブシック・ハイ(前編)【宮治】
*宮治side*
───俺は今……何しとんのやろ?
仮病使て、部活休むし。
おまけに。
そないに仲良くなれてへん同級生を追いかけとる。
「待って」
校門を出る寸前の彼女の腕を、後ろから掴んだ。
「……え、治くん?どないしたん?」
びっくりした顔が可愛くて、そのまま腕の中に収めてしまおうかと思た。
「俺も……一緒に行ってええ?」
***
彼女を間近でちゃんと見たのは今から1ヶ月くらい前、春高予選が近付く10月中旬の事やった。
朝練が終わって教室に向かう途中、その子も偶然廊下を歩いとった。
「あっ。侑くん、銀島くん。オハヨー」
「おはよーさん、名前!今日も可愛いなぁ!」
「苗字おはよ。侑、止め。先輩たちの前でチャラいわ」
ツムや銀と挨拶を交わして、彼女はふんわりと笑った。
確かこいつらと同じクラスの女子。
その程度の情報しか持ってへんかった俺に、このあと衝撃の事実が告げられる事になるとは、予想も出来んかった。
「おはよ」
「おはよ……信介くん」
何故か俺らの後ろにおった北さんとも、小さく挨拶を交わしたその子。
柔らかく笑っていた顔を少し引き締めて、足早に階段を登っていった。
むっちゃ綺麗な足が目に入って、俺とツムは同じタイミングで、階段を登っていく彼女のスカートの中を覗き込んだ。
完全に“思わず”やったが。
「……お前ら、何しとんねん」
真後ろから北さんの低い声が聴こえて、俺とツムはビクッと身体を震わせた。
「ちゃ、ちゃうんです、これは!『あー階段登んのしんどいなぁ』思て、見上げとっただけで……ほれサム!お前からも言うてや!」
「なんやその言い訳……ツムジィさんか」
「ああ゛!?お前どっち側なんじゃボケェ!!??」