第10章 【魔人の笛】第六章――神に選ばれし男――
「おお、レイトンにじゃないか。レミが手伝ってるって相手はお前だったのか」
レミが出かけるときに言っていたツテとはグロスキー警部の事だったようだ。
まさか二人が知り合いだとは思っていなかったレイトンとに対して、レミはなぜか少ししょんぼりとしていた。
レイトンはグロスキー警部に事の詳しい情報を話した。
この事件、裏で糸を引く人物がいるかもしれないと睨んでいるレイトンの言葉にグロスキーは警察署長に要請をしてくると、張り切って
図書館を出て行ってしまった。
話しはまだ終わっていないと言うのに。
「……いい人ではあるんだけど、早とちりなところがあるからなぁ」
「しかし彼がいるのといないのとでは、調査に関して変わってくるからね。レミが持ってきてくれた事件の資料を調べよう」
グロスキー警部が去った後を見つめる。
脱力している身体にレイトンが声をかけ、再び調査へと戻るのだった。
今まで撮った写真も現像してくれたようで、その写真と新聞と資料をテーブルの上に広げる。
事件記録には、アランバード氏は崖から落ちて亡くなったと書かれている。
現場では揉み合った形跡もなく、自宅からは遺書も発見された。
事故か自殺か。
しかし、警察は自殺として処理していたが。
「見てごらん」
レイトンが指さす個所に目を通してみると、そこにはこう書かれていた。
事件の目撃者によると周囲には誰もいなかったという。
その目撃者の名前は「クラーク・トライトン」、そう書かれていた。
「クラークさんがその現場を目撃していた……」
「そんなこと、一言も言っていなかったじゃないか……」
「何か知っているかい、ルーク」
「いいえ……。そんなことはじめて聞きました」
残された遺書には全ての土地の権利はトライトンに譲渡するとも書かれたいた。
血縁者でもない彼に一体なぜ遺産を相続させたのだろうか。
不可解なことはまだある。
レミが持ってきた今朝のロンドンの新聞には魔人の事は一切記事になっていなかった。
町はあれだけ被害を受けているのにも関わらず。
「頭痛くなってきた。ちょっと外で煙草吸ってきます」
頭を押さえ、は図書館の外へ行き少し離れた場所に腰を下ろし、煙草に火をつけた。