第10章 とりかえばや(逆ハー版)第7章
着物の襟を抑えていると、物凄い勢いで飛んできた缶が親分のコメカミに当たり、親分はコメカミを抑えてのたうちまわる。
私はその隙に台所まで匍匐前進で逃げた。
すると、目の前に仁王立ちする何者かの足が見えて、私はそっと見上げた。
…そこには、いつものいたずらっ子のような表情とは全く違う顔をした…いや、般若のような表情のギルベルトさんが立っていた。
「何しくさってんだ、てめえは!!!」
開口一番、震え上がるほどの声音でアントーニョさんに怒鳴った。
「はあ…?なんやねん。人の恋路の邪魔しておいて…
…もしかして、お前も菊ちゃんを…?」
「とにかくてめえは最悪だ!!俺の目の黒いうちは、本田の家に近づけると思うなよ!!」
そう言って、ギルベルトさんは私の家からアントーニョさんをつまみ出した。
……
「あ、…ギルベルト、さん…?」
親分を追い出した縁側で、大きくため息をついたギルベルトさんに、私は声をかけた。
「…お前も。警戒心なさすぎだ。なんで家にあげた?」
振り返った、ギルベルトさんは、もう鬼の形相ではなかったけど、やっぱりとても怒っていた。
「あ、の…パラグライダー…墜落して、アントーニョさん、怪我してたから…」
「だからって。がっつり部屋に上げるなよ」
「え、で、でも、フェリシアーノさんだって…ギルベルトさんだって、上げてますよ!」
「あいつと俺は、いいの。
アントーニョ、フランシス、酔ったアーサーはやめておけ」
えええ。男も女も見境なしなのね…怖いわぁ…。