第9章 エンドロール
紅茶を入れるリヒちゃんの手が止まった。
私は何を言われたのか理解できずに、このとき初めてバッシュさんの目を見た。
その目は優しい目をしていて、何もかも飲み込まれてしまいそうだった。
言いたいこともたくさんあった。
答えなくちゃいけないこともたくさんあった。
何もかも嘘ばかりのこの私と。
何もかも嘘ばかりなこの私と?
「なぜ…?」
涙が溢れてきて、やっとその一言だけが言えた。
「わからない。ただ愛おしいと、思う」
リヒちゃんはその言葉を聞くか聞かないかの間にそっとその場をあとにした。
バッシュさんは席から立ち上がり、私のすぐ隣に片ひざをつき、私の手を取った。思わず私もその場で立ち上がった。
私の指に優しく口付けをして、
「我輩と、結婚して欲しい」
ともう一度言った。