第7章 虎穴のワルツ編
聴きとったのはこれだけだけど、なんというか…不気味な歌詞だ。
囁くように口ずさんでいる。
私は恐ろしくて、親分の顔を見ることができない。
ローデさんも斧を引きずる親分の様子をうかがっている。
「…あなたは、誰ですか?」
不意にローデさんが尋ねると、親分はゆらゆらと体を左右に揺すりながら立ち止まった。
しかし、その質問には答えない。
ただ、地下から聞こえてくる不協和音のメロディーが、だんだんと大きくなっている。
「下がっていなさい」
私は金縛りにあったように動けずに親分を見つめていると、ローデさんはそう言って私の前に立つ。
…でも、ローデさんあなたの武器バイオリン…。
「息づく2雨を」
親分は何事か言いながらゆっくりと振り向いた。
その眼光はいやに鋭く、いつもの親分ではなかった。
「魅入られてしまったようですね…」