第6章 長期滞在になってまいりました。
おおお、ナタさんに続いて初対面だ!とうれしくなって振り向くと、案の定イヴァンさんだった。
しかし、私のうれしそうな表情に少々面喰ったような顔をして「何?」と言った。
もうちょっと慌ててほしかったのか、少し不満そうであるが、私の反応はうれしかったらしい。
「何かあるの?」
「え?今特に何も持ってません…」
「そう言う意味じゃないよー。それ、素なの?」
「はい?」
なんなんだ、イヴァンさん。何か言いたいのは分かるんだが、話が見えない。
「まあいいや。ナタ―リヤには参ったよ。最近特に放してくれなくて」
「いいじゃないですか。私もあんな可愛い妹が欲しかったですよ」
リヒちゃんには負けるけど☆
「泥だらけになって探してますよ、そろそろ見つかってあげたらどうですか」
「えー。やだよ、せっかくまいたのに。君は僕の苦労を知らないからそんなこと言えるんだ」
うーん。イヴァンさんの気持ちが分からないから、あんまり無責任なこと言っちゃうのもアレなのかな。
「…はあ。でももう少ししたらちゃんと見つかってあげてくださいね。タオルと一緒に」
そう言って私は袖からハンカチタオルを出してイヴァンさんに差し出した。
「いやー、君は本当に気がきくなぁ。ここ暑かったんだよー」
そう言ってイヴァンさんはそのタオルを額に当てた。
お前に渡したんじゃなーーーーい!!!!
「ん。なんか女の子みたいなにおいがする」
イヴァンさんはハンカチを見ながら、ぼそりとそう言った。
な、ハンカチって性別までわかっちゃうアイテムなの!?
私はあわあわしながらイヴァンさんを見ると、
「…はい、菊くん。
僕はいいからちゃんと彼女に返すんだよ」
そう言って二コリとほほ笑んだ。
そして、「今度彼女見せてね☆このリア充」と言って去って行った。
やっぱり不思議な人だった。