第6章 推し?
「坂木は、誰推しだ?」
そう、同級生に問われ酒を飲む手が止まる。
安栖しか知らねぇ‥そして、興味もない。思わず顔が険しくなってしまう。
その空気を察してなのか、隣の席の女学が助け舟を出してくれる。
「坂木くんは、アイドルなんて興味ないイメージだよね!」
クソみたいな助け舟を出してきた。これだと面倒な事になると思ったら案の定、話を出した4学年が近づいてきて、嬉々とした目でオレの隣に座る。
「では、オレが安栖咲の事を詳しく教えてやろう!!」
そう言って、カバンから一冊の雑誌を出してきて机の上に置く。視線を向ければ良くある少年誌の表紙のグラビアが安栖であった。
こんな仕事もしてんだなと感心をしてしまった。
「まず、顔良し!スタイル良し!声良!全てが良い!!」
「興味ありません」
「聞け!坂木!」
興味がないと返答しても、聞く耳を持たれずページが進む
そこには、左目辺りを手で隠し、首には黒いチョーカー、胸の谷間があらわになったきてる意味が無いであろうタンクトップ、そして着崩したジャケットでアップで写る姿の写真があった。
「見ろ!この素晴らしい肉体をッ‥こんな童顔で、ポテンシャルがここまでとは思わなかったよ、脱いで欲しくないオレと脱いでくれた事に喜びを感じている罪深いオレが葛藤している!!」
「確かに、スタイル良いですね」
「だろう!!お前も今日から咲推しだからな!!」
「はい」
「とは言え、こんな可愛い子彼氏居るだろうな」
そう言うと少し悲しげに、雑誌をカバンへと片付けていた。
安栖に彼氏居ない事は間違いない。でなければ、同席していた男に処女をバカにされて水をかけられたりしてないだろう。この間会った安栖は少なくともこんな派手な服装では無かった。
オレが少しだけ知っている安栖と、目の前の奴らが話をしてる安栖咲は違う人物なのかと思った。