第15章 カルムと私と兄さん達
「カルムはちゃんと氷空を連れ出せたかな」
クダリ兄さんはシングルから戻ってきたノボリ兄さんと合流している
クダリ兄さんの方も4両目で挑戦者がリタイヤしたらしい
2人はマルチの準備に向かって歩いていた
「氷空は少々、頑張りすぎますからね…」
彼女は誰よりも早く仕事を終わらせて他の人を手伝ったり
よく迷子になるカズマサを探しに行ったり
いつの間にか次の週の仕事もやり始める事もある
休みの日も来て掃除したり、鉄道員や私達の制服を洗濯したりすることもありましたね
ノボリ兄さんはクスッと笑うと
「もう少し、私達を頼ってほしいものです」
「でも意外、ノボリ兄さんがカルムに氷空の事を頼むなんて」
普段、ノボリ兄さんは氷空の事に関しては絶対にカルムに頼まない
僕も氷空の事が心配だからカルムに頼んでくれて良かったけど
「まだ二人が恋人同士だという事や結婚を考えている事に反対ですが、彼女が安らげるのは彼だけだと思っています」
悔しいですが…とノボリ兄さんは壁を思い切り叩いた
「父さんがカルムを見たらどんな評価を出すのかな?」
「そうですね」
兄さん達は幼い頃に亡くなった父親の事を思い出していた