第1章 背伸び [煉獄杏寿郎]
鬼滅学園高校を卒業して、晴れて製菓の専門学校へ進学となったトリ
お菓子やパンを作るのが大好きで、幼なじみの炭次郎の両親のお店、KAMADOベーカリーで小さい頃からお手伝いをするほど。
自分の作ったお菓子を友達や学校の先生、お店のお客さんに配る事もよくあった。
「ほんもののお菓子屋さんみたーい!」と、喜んでいる姿が嬉しかったり、アドバイスやアイディアをくれる人達の意見をしっかり吸収する勉強家で努力家な一面もあった。
両親には好きなことをやりなさいと言われており、パティシエールとなる事も考えた事もあったが
自立するのにも時間がかかるだろうし趣味でやっているからなぁ、難しいだろうな。と、トリは考えていて、製菓の専門学校へ進むのは中々気が進まなかった。
それでも、レシピ通りに作るだけではなく、自分で材料の分量を考えてオリジナルレシピを考える事も好きで、ちゃんと専門的に製菓のことを学びたいなとも思っていた。
そう進路を迷っているトリの背中を押してくれたのが、歴史教師の煉獄であった。
3年間トリのクラスの担任や副担任として密に関わってきたのはもちろんだったが
煉獄にトリが作ったお菓子やパンを渡すと、必ずお礼の言葉とお返しとアドバイスをくれたり、今度はこういうのは?とアイディアをくれたり。
何より、うまい、うまい!と美味しそうに食べてくれる姿が嬉しかった。
2年生の終わりの時に、進路について煉獄と話す機会があって、製菓の道は難しいから辞めて普通の大学へ行こうかと思っている事を伝えると
「やりたい事が見えているのに、諦めるのか?」
と、本音を言われて腹が立ったのをトリは覚えている。
諦めたくて諦めてるんじゃない、色々考えて…と言葉にしようと思っていたが
「トリは真面目で周りに気を使えるのは知っている。それ故に、自分のやりたい事を沢山今まで我慢してきただろ?これからは自分を優先に考えてみても良いんじゃないか?そして、やる前から無理だと思うのは先生は感心しないな。」
今まで我慢してきた事が煉獄のその言葉によって崩されてうわーんと煉獄の目の前で子供の様に喚いて煉獄の胸を借りて泣いたのが記憶に新しい。