第2章 [冨岡 義勇]
触れたいのに、触れられない。
そんなもどかしさに、トリに冷たい言葉を掛けてしまった。
トリは悪く無いのに…。
癒柱として、胡蝶屋敷にて鬼殺隊員達の治療や機能回復訓練を行うトリ。
誰にでも優しく、老若男女問わず接するそんなトリにいつからか惹かれていた冨岡義勇。
一緒に任務に行ったり、冨岡の治療をしてくれ、口数の少ない冨岡に嫌な顔をせず、いつも微笑みよく笑ってくれたトリに対して、トリに対する好意が大きくなる。
「特別な関係は求めない。だが、これからもキイロイと共に過ごし、俺が居る時は守って行きたい」
と、よく面と向かって恥ずかしい言葉を口にできたなと、関心をする。
トリは嗅覚が異常に発達しており、その言葉を言った冨岡が嘘では無い、本気で言ってる言葉だと受け止めて、こちらこそ宜しくお願いします。と、優しく微笑んだ。
誰とも恋仲とはならないとトリは言う。
特別になってしまうと、特別では無くなった時寂しいでしょ?と、トリは言った。
そんな私を翻弄させようと頑張る姿を見るのも楽しいしね。
と、悪戯っ子の様な艶のある含んだ言い方をしたトリの顔が目に焼き付いて離れない冨岡だった。
みんなと居る時は平等、2人きりの時は特別にその相手に接するトリ。
そう関係を割り切り、関係を持ってくれるだけで冨岡は良かった。
口数が少ない冨岡は周りから良く勘違いされやすく、揉め事も少なくは無い。
そんな中、トリは違った。
周りからの評価で冨岡の事は一切見ず、実際に接して感じたままに冨岡と接してくれた。
正しいことは正しい、間違っている事は間違っているとはっきりと冨岡に言えるのはトリくらいだろう。
そう真っ直ぐ冨岡に向けてくれるトリの意思にも惹かれていた。
特別にはならない、一緒に居られる時に真っ直ぐ向き合っていて欲しいと思っていたはずなのに、その日は無性に欲を出してしまった。
機能訓練として、トリが療養している隊士達に関連をつけている時に、わざとトリに触れようとする下心丸見えの隊士との訓練を目の当たりにしたからだ。
何やってるのーと笑っているトリだが、冨岡はその姿を眉間に皺を寄せながら見ていた。