第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
「馬鹿か、なにやってんだ。」
首根っこを掴まれて起こされたけれど、ヒカルの頭は増えたレオナでいっぱいだ。
「え、これって撮れば撮るほどレオナが増えるの? 神アイテム……?」
天から授かった神器を恭しく崇め奉った時、ヒカルの手からカメラが奪われた。
「……このカメラは、俺が預かる。」
「だ、だめーー! それはわたしの欲望を叶える……じゃなくて、ユウの大事なカメラだから!」
「なら、俺が監督生に返しておく。邪な計画を企てるな、噛みつくぞ。」
「くぅ……。」
なんだよ、なんだよ、自分は散々悪事を企てていたくせに。
けれどヒカルは諦めない。
ゴーストカメラで大好きなレオナの数を増やし、部屋をレオナでいっぱいにする日がくるまでは。
とある年、なんの魔力も持たない平々凡々の異世界人がツイステッドワンダーランドへやってきた。
右も左もわからぬ異世界で、彼女は元の世界に戻る方法を探す――のではなく、恋人となった獣人王子を写真に収めるべく奮闘した。
彼女の夢は、部屋中に恋人の写真を飾り、飛び出してきた恋人に囲まれて朝も昼も夜も生きること。
その夢が叶ったかどうかは、わからない。
けれど、夕焼けの草原出身の第二王子が数年越しの卒業をし、卒業証書と共にひとりの異世界人を故郷に連れ帰ったのは、王家に伝わる歴史書にしっかりと書き記された。
王家に連れられた異世界人は、我儘で怠惰な王子と、小言が多く守銭奴な彼の侍従と一緒に、幸せいっぱいに生きたという。
朝も昼も夜も。
彼女の夢が叶ったかどうかは、わからない。
だがそれは、最高のハッピーエンドと言えるだろう。
劣等感を拗らせた王子と、推しへの愛を拗らせた人質のお話。
Fin