第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ひとまず落ち着きを取り戻したヒカルは、改めてラギーの手料理をいただいた。
やはり、サバナクロー寮オカンの料理はとても美味しい。
「つーか、ヒカルくんの部屋どうしよ。空き部屋はあるにはあるけど、掃除してないんスよね。今から片付けたら、朝になっちまうし。」
うーん、と悩むラギーの横顔を見て思い出した。
そういえば、ヒカルにはラギーとの親密度をアップさせねばならないという使命があった。
「じゃ、ラギーくんと一緒の部屋でいいよ。」
「はぁ!?」
なんとはなしに言っただけなのに、ラギーが大げさなくらい反応した。
いくらずる賢く策略に長けていても、中身は17歳の男子らしい。
「バ…ッカじゃないッスか!? オレ、男ッスよ?」
「知ってるけど。」
「だったらなおさら、バカじゃないッスか!?」
そんなに全力で反応されると嬉しい。
こちとら純粋無垢な少女ではないのだ、オールキャラ大好きなヒカルからすればワンナイトラブくらい大歓迎だし、むしろそうした方がラギーとの親密度も上がって万事解決な気がする。
レオナ顔負けの悪巧みを考えていたヒカルをどう思ったのか、ジト目になったラギーが呆れた顔でため息を吐く。
「やっぱりヒカルくんは、一筋縄じゃいかないッスね……。」
「え、なにが?」
「惚けないでほしいッス。オレ、知ってるんスよ? ヒカルくんが女を武器に、あの手この手でいろんな寮生をコキ使ってるってこと。」
「なにそれ、人聞き悪いな。」
ヒカルはただ、膨大な量の雑務を前に困り顔をしながら、「どうしよう、誰か手伝ってくれる人はいないかな……?」と呟いているだけだ。
なにせここは男子校。
唯一の女であるヒカルにイイ顔をしたい思春期男子は山ほどいる。
草むしりや備品の修理、掃除や買い出しだって、彼らは喜んで手伝ってくれる。
見返りは特になく、きらきらした笑顔で「ありがとう」と言うだけ。
免疫のない純情男子ほど、扱いやすいものはない。