第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
弾けた快楽はヒカルの身体にじわじわ染みていって、心地良い余韻を与える。
転がっている場所はベッドでもソファーでもなく、VIPルームの床の上。
情緒の欠片もない場所だというのに、前回ベッドで交わった時よりずっと幸せだ。
すぐに離れる必要はなく、急いで部屋を出て行く必要もない。
抱擁してくれるアズールの体温を感じ、幸福な思いで微睡むだけ。
……というわけではなかった。
「ん……ッ」
はあはあと息を荒げながら、アズールの舌がヒカルの耳や項をぺろぺろ這った。
その息遣いは激しい律動と吐精によって乱れたものではなく、むしろ、たった今興奮しているかのようだった。
「あ……、アズール、くん……ッ」
媚薬が抜けきらない身体は敏感で、そんなふうに舐められると新たな欲求が生まれてしまう。
絶頂し疲れた身体は休息を求めていて、これ以上の刺激はやめるように名前を呼んだ。
しかし、ヒカルの呼び掛けは本来の意味として伝わらず、顔上げたアズールの瞳には明らかな欲望が宿っている。
「もっと、もっと……。ヒカルさんが、足りません。もっと僕にください……。」
滾った眼差しに射抜かれて、達したばかりの身体がきゅんと疼くが、欲望のままに快楽を追い続けるには体力の限界で、燻り始めた感覚を無視してアズールを宥める。
「また、今度にしよ?」
「ダメです。もっとヒカルさんが欲しい。あなたは、僕のものだ……。」
熱に浮かされたように囁き、肌を舐め、キスをする。
ちゅっと唇を啄まれて気がついた。
ヒカルは、媚薬を口にした。
その口で何度もアズールとキスをしたら、どうなるのだろう。
答えはおのずと知れていて、ヒカルの話を聞かないアズールは完全に媚薬の効果に翻弄されている。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて! 媚薬の中和剤とかないの?」
「中和剤……? そんなもの……、必要ありません。」
いや、必要だろう。
少なくとも現時点で、アズールが欲望に打ち勝つ要素は微塵もない。
押す方と引く方、いつの間にか立場が逆転したが、発情した恋人の前ではアズール同様手も足も出ず、強烈なキスにて黙らされた。
媚薬によって濡れ場になだれ込んだ場合、一度の行為では収まらないと相場が決まっている。
そんな相場、知りたくもなかったけれど。