第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
とりあえず胸ぐらを離したら、クロウリーが一歩後退した。
その一歩はやけに大きく、対面して話し合うには少し遠い。
「ゴホン……。その、ヒカルさん。怒らないで聞いてくれます?」
「……内容によりますね。」
怒らないで聞け、と言う人の話は大概怒ってもいい内容だ。
事の次第によっては再び胸ぐらを掴むだろう。
クロウリーが、もう一歩離れた。
「実はですね、魔法の掃除機の修理は素人には無理でして、職人さんにお願いしなくちゃいけないんです。」
「そうですか。なら、依頼してください。」
「ええ、もちろん! 私だってそのつもりでしたよ? ただ、なんというか、そのぅ……。」
歯に物が挟まった言い方にイライラする。
こちとら、なにかと言い訳を重ねて逃げられてきた身だ。
雑用係だと思ってナメられては困る。
「なんですか、早く言ってくださいよ。でないと、教室の真ん中で学園長にセクハラを受けたって喚きながら泣きますよ?」
「こ、こら! 冗談でもそんなことを言ってはいけません! シャレにならないでしょう!」
ならば早く言えと促すと、両手を上げながら白状した。
「実はですね、私、その職人さんが苦手なんです。なんというか、怖くて……。」
「はい? まさか、職人さんに依頼するのが怖いから、今まで掃除機を修理してくれなかったわけじゃないですよね?」
「……。」
沈黙がすべてを語っている。
いい大人が、ふざけるんじゃない。
「ちょっと、教室の真ん中に行ってきます。」
「ああッ、やめてください! ごめんなさい、謝りますから許してください!」
たかが雑用係に学園の主たるクロウリーが頭を下げるという、あってはならぬ事態に発展した。