第1章 全話共通プロローグ!
人生とは、ままならぬもの。
高校を卒業して二年。
ヒカルは早くも社会の壁にぶち当たっていた。
進学を勧める親の希望を跳ねのけて、なんとなく就職して上京したのは18歳の春。
憧れていたはずの日本の首都は、想像していたよりもずっとシビアで水も不味い。
高校が紹介してくれた企業は当初のイメージとは異なり過酷な労働条件で賃金も安く、一年足らずで辞めた。
反対を無視して上京した手前、退職を親に相談できず、両親は今もヒカルが東京で頑張っていると思っているはずだ。
頑張っていないわけではない。
正社員という言葉に騙されたのがトラウマになり、アルバイトを掛け持ちしながら生活するのは、誰がなんと言おうと努力の賜物。
でも、職場が増えれば増えるほど覚えることや人付き合いが増えていって、そんな生活に辟易しているのもまた事実。
東京へ来て出来た彼氏とも、ずいぶん前に別れた。
今のヒカルの楽しみは、最近配信されたばかりのスマホゲームだけ。
とにかく全キャラクターが魅力的で、ストーリーも楽しくて、暇さえあればゲームを開いて攻略済みの物語をリピートしている。
顔がいい、声がいい、キャラがいいの三拍子が整えば、ハマるなという方が無理な話。
おかげでゲームへの課金はすごいことになったけれど、日々の楽しみとストレス解消に役立っているのなら安いものだ。
こんな世界があるのなら、是非とも行ってみたい。