第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ヒカルが用務員生活を始めてから、しばらく経った。
最初は慣れない重労働に四苦八苦していたけれど、掃除も整備もコツさえ掴めば余裕が出てきて、ついでにちょっと可愛くお願いすれば、純情を持て余した男子校生徒が手伝ってくれる。
一方で正規の主人公であるユウは毎日が忙しく、授業に宿題、グリムの御守り、エースとデュースによる巻き込まれ事故と、本当に大変そうだ。
先日はハーツラビュル寮で開催された“なんでもない日のお茶会事件”に巻き込まれ、闇堕ちバーサーカーと化したリドルと盛大なバトルを繰り広げていた。
それが正しいストーリーとはいえ、毎晩睡眠時間を削って勉強に勤しむユウは見ているだけで不憫に思えた。
だからつい、助け舟を出してしまったのは年上の女として仕方ない行動だ。
そういう時のために同じ寮で暮らしていると言っても過言ではない。
基本的にユウは真面目で素直な子。
宿題を手伝えとか、そんな無茶な要求はしない。
というわけで、今ヒカルの手元にはカメラがある。
ゴーストカメラと呼ばれる魔法道具は、ユウがクロウリーから授かった不思議アイテム。
このカメラで撮影した写真は、中から被写体となった人物が飛び出してきて動き出すのだという。
ただし、被写体の人物と親密にならなければ効果を発揮しないという、なんとも面倒くさいアイテムだ。
日常の些細な出来事を写真に収め、報告書代わりに提出しろというのが、クロウリーがユウに出した課題。
しかしながら最近のユウは本当に忙しく、呑気に写真なんて撮っていられないというのが実情。
ゆえに、ヒカルが代わりに撮影する羽目になった。
写真を撮るくらい、どうってことない。
掃除や草むしりの最中に生徒を見かければパシャリ。
タイミング良く課外授業に出くわせばパシャリ。
写真の枚数だけは、どんどん増えていく。
ただ面倒なのは、対象の人物と仲良くならねばならないところ。
カレッジには多くのモブ……じゃなくて生徒が在籍しており、彼らの顔と名前を覚えるだけでもひと苦労。
ゲーム内ではお付き合いするキャラクターが限られていても、現実ではそう上手くいかないのだ。