第5章 鬼の能力
ジンは一瞬顔を歪めた。
寂しいのだろうか・・・。
私は、無慈悲な鬼だから、そういう気持ちには鈍いのだ。
分かっていても、今の自分が好きだから直す気にはなれない。
「それじゃあ、ハンター試験なんてどうでしょう!」
「ハンター試験・・・?」
「はい、年に一度行われる、プロのハンターになる為の試験なんです。試験に合格した時に貰えるカードを持っていれば、ハンター専用の情報サイトを利用できるようになったり、各種交通機関、公共機関のほとんどを無料で利用できたりするんです。それに、一般人立ち入り禁止区域の8割以上に立ち入りを許されるようになるんですよ。・・・まぁ、当然リスクもあるんですけどね。ハンター試験って、一度合格すると取り消されることはないんですが、再試験も出来ないんです。だから、カードの盗難や紛失があっても再発行は一切されないんです。」
・・・。
長い説明を聞いて、思ったことは一つ。
一般人立ち入り禁止区域に入れる。
そこに入れれば、亡者探しも少しは楽になるのではないか。
なんて事だった。
「ジン・・・。」
「いいんじゃねぇか?行ってこいよ!!」
ジンは楽しそうに、ニッと笑ってそう言った。
「でも・・・。」
カイト君が眉尻を下げ情けなく笑い顔を伏せる。
「鄙鬼さんが居なくなると寂しくなりますね・・・。」
「なに言ってんだ。生きてりゃ、すぐに会えるだろ。」
「・・・そうですね!」
カイト君は恥ずかしそうに、帽子のつばを掴んだ。
無意識に手が伸びる。
そのままカイト君の頭の上に撫でるように手を置く。
「鄙鬼さん・・・?」
「・・・いえ、何でもありません。」
私としたことが・・・。
生きているモノにあまいのは、私の駄目なところだ。
いくら無慈悲な鬼だからって、生き物を愛でたくなる時だってある・・・筈だ。
自分の行動に眉を寄せながらも、カイト君の気持ちが嬉しくなかった訳じゃないと髪を梳くように一度だけ撫でる。