第1章 [煉獄杏寿郎]
「ふぅー…。」
深い溜息をつき、キンッと鞘に日輪刀をしまうのは、炎の柱、煉獄杏寿郎。
鬼の首を切り、退治したのは良いがその際に鬼の血を浴びてしまった。
(なんだ、この身体の違和感。身体の奥が熱い。
五体の鬼を退治した疲れか?下っ端の鬼相手にそれだと柱として不甲斐なし。
それとも、何かの血鬼術か…?早めに胡蝶の屋敷へ行って何の血鬼術か調べて貰わねばな…。)
後片付けを隠の者達へ託し、胡蝶屋敷へと足早に向かう。
後少しで胡蝶屋敷へ到着すると言う時、煉獄の心臓がどくんっと唸り、脚が止まる。
ぐっと急激に体温が上がり、息遣いが荒くなる。
「…はぁっ、はあ…っ」
(…なんだ?急に…、身体が熱い…)
目眩も出て、両脚で立っているのがやっとな煉獄。
それでも屋敷に行かなくては、と脚を踏み出そうとすると膝が笑い、倒れそうになる。
(…!よもや…っ)
受身も取れず、顔から突っ込むと思ったその時、ふわっと両脇を支えられる。
「お疲れ様です。煉獄さん。胡蝶屋敷まではもう少しですから、あと少し一緒に頑張りましょう?」
「…キイロイ…か。すまん、少し、肩を貸してくれ…っ。力が、入らん…」
もちろんっと、微笑み掛けたのは、トリ。鬼殺隊の癒しの柱として胡蝶屋敷にて、治療を主に行なっている。
トリの熱を、匂いを感じたとたん、またどくんっと煉獄の心臓が高鳴り、更に中心部が熱くなる。
むらっと湧き上がる[感情]。
そう、[己の欲を吐き出したいという欲望]。
「はぁぁ…っ、ぐっ…キイロイッ、俺からッ…離れろ…ッ」
「まだ、理性はありますね。呼吸で血鬼術の周りを遅くしていますね、流石です。それで無いと…」
(なん…だ…キイロイの、呼吸か…)
ふわっと甘い匂いが落ち着く様な匂いが香ったかと思うと、煉獄はそこで気を失った。
「それで無いと貴方は人を襲っていましたよ、欲望のままに。」
煉獄に着いた血の臭いからどのような血鬼術かわかるのがトリの呼吸の能力でもあった。
瞬時に匂いを嗅ぎ分け、それに効果的な役割の匂いを放つ。
パチンっと指を鳴らすと、隠しの人が数名現れて、煉獄を胡蝶屋敷に連れて行く様に指示をした。