第6章 呪われし美姫と 英明な従者
完全に眠りから覚めたオーロラ。
もう異様な眠気も、息苦しさもなかった。
いつもの自分と変わらない。変わったのは、重い呪いをその身に受けてしまった事だけ…。
カツン、とまた窓から異音。
『…!』
どうやら、誰かが窓を小突いているようだ。
普通ならそんな怪しげな訪問者があれば、すぐに兵を呼んでしまうだろう。
しかし、オーロラはそうはしなかった。
何故だか分からないが、彼女の中に確信めいた物があったのだ。
“ 今すぐに、窓を開けろ ” と。
まるでそれが、あらかじめ決められていた事のように
彼女はその怪しげな訪問者を室内に招き入れた。
窓の鍵を外して、押し窓を開いてやると。すぐにその小柄な男は
室内へとひらりと身を滑り込ませて来た。
そして、あろうことか第一声は…
「お姫様は随分と不用心じゃのう。
ワシみたいに怪しい男を部屋に入れてはいかんじゃろう」
だった。
リリアは、部屋に入れてもらえた事に対して礼を述べるどころか。逆にオーロラをたしなめるのだった。
しかし彼女に、そんな事を気にかける余裕などなかった。
見覚えのある男の姿に、思わず駆け寄った。
『貴方は、あの時の…!
お体はもういいの?無事だったのね…、よかった…。
よかった、本当に…』
彼女はリリアの姿を再度しっかりと確認すると、まるで生き別れた父親と再会でもしたかのような喜びを見せるのだった。
「…ワシなら平気じゃ。
お前さんはほんに、優しい娘じゃのう」
リリアは、オーロラの頭の上に軽く手を置いた。
その優しくて安心出来る温もりに、オーロラは思わず瞳を閉じてしまう。
『…ごめんなさい…。父を止められなくて。
私だけは、貴方達が悪い人じゃないって分かっていたのに。
何も、出来なくて…。弱い私で、本当にごめんなさい』