第6章 呪われし美姫と 英明な従者
長い長い会議の最中。
フィリップの付き人であるジェイドと、
リドルの付き人であるトレイとデュースは、別室にて待機していた。
言うまでもなく、その場の空気は重々しい。
いつまでも無言が続くその空気感に耐えられず、1番年下のデュースが口を開いた。
「…マレウス・ドラコニア、噂に違わぬ強さでしたね。
あの場にいた魔法士全員で挑んだのに、傷1つ負ってませんでしたよ」
「あぁ。不甲斐ないな…。あんなに近くにいたのに、守ってやれなかった」
トレイは、苦々しい表情を浮かべて言った。椅子に腰掛け、右拳を自らの左手で握り込んで。
それに答えるのはジェイド。彼はトレイの隣に立っている。
「仕方ありません。彼は世界屈指の魔法士ですからね。
しかもあの姿になっている時に、太刀打ちできる人間など。どこを探してもいないと思いますが」
流暢に話す彼を、トレイはチラリと見上げた。
ハーツラビュルには、アズール達がディアソムニアを狙っている事は一切伝わっていない。
しかしトレイは、なんとなくこの男が好きになれなかった。
ジェイドは、物腰柔らかく、常に笑顔だというのに。どうしてもその腹の奥に何かを飼っているように感じられて…。
「…そういえば、オーロラを助けたっていうナイト様の姿が見えないな。
あんたの双子の兄弟なんだろ?」
「あぁ!たしかフロイドさんって言いましたっけ?ほんとに見た目そっくりですもんね!
それにしても、落下中のテラスから城内に飛び込んでくる姿、バリバリにイカしてましたよね!」
デュースは興奮気味に言った。
自分達のそんな言葉にジェイドは、一切答える事はなく。
ただ、その妖艶な笑みを湛えているだけであった。
トレイは心の中で呟いた。
だからそういう態度が、俺の怪しい奴センサーに引っかかってるんだって。
と。