第5章 ユニークなトランプ達は踊る
既に開かれた広間に、たくさんの人がいる。
広大な面積があるというのに、なかなかの人口密度だ。
ディアソムニアは、ハーツラビュルだけでなく
最近、オクタヴィネルとも同盟を結んだ。それに伴って、招待客も自ずと増えたのだろう。
そんな広間に、ハーツラビュル一行の姿もあった。
国王と王妃は、それは立派な椅子に座り。主賓の客人と話をしていた。
しかし、主役であるオーロラの席は空いていた。
「ディアソムニアには、あんなに綺麗な子供がいるんですね」
デュースは素直に感動していた。
「はは。お前はストレートな奴だな。
まぁたしかに、あそこまで顔面の整ってる女の子はなかなかいないよな」
「下品な会話はおやめよ」
リドルは1人、溜息を吐いた。
「下品って…もしかして照れてるのか?思春期か」
「思春期だよ!」
リドル・ローズハート。11歳。思春期真っ盛りだった。
「でも僕達、彼女の名前すら聞けませんでしたね。
結局あの子は何者だったんだろ」
そう言いながらデュースは、広間の最奥に座る王妃を見た。
その王妃が、オーロラに似ていると思ったのだ。
実際、オーロラは母親似だった。
栗毛も、赤い唇も、母親によく似ていた。
デュースは、今自分の頭の中に浮かんだ考えをすぐに打ち消した。
さすがに一国のお姫様が、誕生祭当日に
裸足で中庭を駆け回り、木登りが得意だと言い張るはずはないと思ったから。
「そういえば…、後でね。って言ってなかったか?」
「うん。たしかボクもそう聞いた。
という事は…彼女も今日招待されているんだろう」
正確には、招待されている。のではなく、
招待した側。なのだが。
彼等はその事には気付かない。
「噂じゃ、オーロラ姫も相当に可愛らしいって話だぞ?」
「…へぇ。でも、彼女ほど美しい人がいるとは、ボクには思えないけどね…」
「「…」」にやにや
2人の顔を見て、思わず本音を漏らしてしまった事を、後悔するリドル。
「っ…、いい、度胸がおありだね…!今すぐにクビを跳ねてやろうか」
その時。重厚感のある広間の入り口が、ギィと音を立てて開いた。