第4章 運命に引き寄せられた出会い
マイペースな王子様。王子様に甘々な側近。
デュースは頭を抱えた。しかしそんな彼にあろう事かリドルは言い放つ。
「ほらデュースも早くお塗りよ。パーティーに間に合わない」
「僕は塗りませんよ。
というか、謝らないと…。いや謝って許してもらえるのか?
宣戦布告と取られてしまったらどうしよう…!」
おどおど慌て始めたデュース。
そんな彼を気にも止めず、トレイがポツリと言った。
「ん、あそこに誰かいるな」
2人はトレイが指差す方向に視線を投げる。
するとそこにはたしかに、人が立っていた。
ここから少し距離があるが、どうやら女の子のようである。
彼女は、ひときわ背の高い木の側に、立ちすくむ様にそこにいた。
「何か様子がおかしいな…」
「そうだね。行ってみよう」
リドルが薔薇を塗る手を止めてそう言った。従者の2人は勿論それに従う。
彼女との距離が詰まって行くほどに、少しずつ全容が見えてくる。
彼等が近付いてきているというのに、彼女はこちらに気づく様子はない。
一向に顔を上げない。彼女の視線は、自分の前に差し出された両手の中を凝視したままだ。
その手の中に、何かあるのだろう。
「君、こんなところで何してるんだ?」
代表して声をかけたのは、年長のトレイ。
その声に、オーロラは弾かれたように顔を上げて彼等を見た。
「「「っ、」」」
3人は、つい息を飲む。
彼等はオーロラに対して、同様の印象を持った。
薔薇のように、美しいと。
見ていると、まるで心の奥を温められるかのような気持ちになる。
ずっと彼女の事を見つめていたい。そう思った。
栗色の巻き毛。絵筆で描かれたみたいな濃く長い睫毛。
今にもとけそうな柔らかそうな頬。そして、薔薇の花びらと間違えそうになる赤い唇…。
リドル、デュース、トレイは、息をするのも忘れて
ただただオーロラを見つめた。