第26章 眠り姫の物語
「あはは!お姫様のドレス、ピカピカ光ってて ウミホタルみてぇ」
「ええ、綺麗ですね」
「ねぇジェイド?オレが今からさぁ、お姫様こっから攫ったら大変な事になるかな」
「誘拐ですか…。それは楽しそうですねぇ。僕も協力させてもらいましょうか」
フロイドとジェイドは、ニタニタとした笑みをたたえながらローズを見ていた。
その隣では、フィリップとアズールが静かに佇んでいる。
「おい、お前のお仲間が物騒な事言ってんぞ」
「大丈夫ですよ。彼らが本気なら、もうとっくに実行に移してます」
「あ、そ」
「随分と元気が無いですねえ!傷心がまだ癒えていないとみえる」
「そりゃそうだろ。はぁ…
お前は元気だよなぁ。ほくほくした笑顔浮かべやがって。
で?ステファン王からいくら貰った?」
「おやおや、それは何の話ですか?僕には、何のことだかさっぱり」
フィリップの鋭い視線を、アズールはするりと躱してみせる。しかし、追求の手は緩まない。
「しらばっくれんなよ。どうせ “ 国を救ってくれた礼だ ” とか言われて、礼金が出てんだろ。ったく。人の事ダシにして、俺には報告無しかよ」
「人聞きの悪い。貴方には、名誉と名声を差し上げたではありませんか!」
「…お前が手に入れたのは、金だけじゃねぇ。今回お前が得た1番でかい収穫は…
“ 自らの罪 ” の帳消しだろ」
ギラリと、フィリップの目がさらに鋭く光る。しかしアズールは、動揺など微塵も滲ませない。
ただ瞳を閉じて、鼻で笑った。
「…ま、いいけどよ。今さら白状させたところで、誰も得しねぇし。
それにしても、ほんと強欲な。お前」
「強欲、ですか。嫌いな言葉ではありませんが。ただ、そんな僕でも…1番手に入れたかったものは、この手から、零れ落ちてしまった…」
切なげな視線を、ローズへと向けるアズール。
そんな彼の肩に、フィリップは優しく手を置いた。
「ざまーみろ、だな」
「…この眠り王子がっ…!」
「ん?いま何か言ったか?」
「滅相もございません!さぁ、いい加減にパーティを楽しみましょう!
ほら あちらに、貴方とダンスのお相手をして欲しいと大勢のご婦人方が!」
「っ、や、やめろ!押すな!クソ!仕返しのつもりか!やっぱお前性格わりぃぞアズール!!」