第26章 眠り姫の物語
『ふふっ、こうドレスの色が変わるんじゃ…お色直しは必要ないわね』
「……」
楽しそうに笑うローズだったが、マレウスは些か不服顔である。
2人はダンスに興じながら、会話を続ける。
『マレウス?』
「君が皆から愛されている事は知っているし…君がどんな色も似合うという事も知っている」
『え?あ、ありがとう?』
「だがな、やはり…
ローズを1番愛しているのは僕で、ローズに1番似合う色は…」
マレウスは、意地悪そうな笑みを浮かべ…
彼女に、ひとつ魔法を施す。
「黒だ」
その瞬間、ローズのドレスは濡羽を思わせる漆黒へと色を変えた。
サテン生地の上に乗った黒は、艶やかに光る。
光を吸い込んで輝くそのドレスは、間違いなくローズに似合っていた。
『…黒はね、マレウスのイメージ。
一見すると 冷たい色だけど、本当は 全てを包み込んでくれる、優しい色。
私、黒が大好き』
「ローズ…」
『愛してるわ、マレウス。
これから何が起ころうと、未来がどうあろうと、私は一生、貴方を愛し続ける』
「…ありがとう、ローズ。
僕も、生涯 お前だけを愛し抜くと誓おう。
共に、生きて行こう。そして2人で、僕達なりの幸せを作っていこう」
大勢の人に見守られる中、2人は誓い合うのであった。