第26章 眠り姫の物語
「はいは〜〜い、んじゃ王子様はオレらとあっちでお話ししようねぇ」
「フロイド!?」
「ふふ。優しい優しい僕達が、事情を説明して差し上げましょう」
「ジェイド…!」
突然にゅるりと現れた2人に、両脇を固められたフィリップ。そしてそのまま双子にされるがまま、彼はずるずると退室を余儀なくされる。
「あっは!それにしてもさぁ、あそこで現れちゃうなんて、やっぱ王子様、もってんね」
「あの場合、もっているのはアズールなのでは?」
「……はぁ。もう、お前らに突っ込む気力さえ残ってないわ」
「なんで?つまんねーの。んなの王子様じゃねんだけど」
もはや双子にされるがまま。担がれ運ばれながらフィリップは うな垂れた。
はなから自分で歩く気もないらしく、ずるずると引き摺られている。
「大事な時に眠りこけて、なんも事情が分からねぇけどよ…。
とりあえず、自分が失恋した事ぐらいは なんとなく分かる。
あぁもう、なんでこう…俺ばっか不幸に…」
「あぁそれなら…。失恋したのは、なにも貴方だけではありませんよ」
「は?それってどういう意味」
「っつーかさぁ!ちょっとぐらい自力で歩けよ!」重いっつーの
「フロイドの言う通りですよ。貴方には立派な足が付いているのですから、しっかりとご自分で歩いて下さい。
そして…貴方は貴方の、幸せを見つければ良いではありませんか。
きっとフィリップ王子様なら、素敵なお相手を見つける事が出来ますよ」
「…ジェイド。お前…」
フィリップは、2人からバッと離れてジェイドを指差して言った。
「お前!!なんかそうやって良い感じの事言って、慰めるフリしやがって!
実は俺に見合いをさせたいだけだろ!写真の相手と俺を会わせろって、親父に頼まれてるの知ってんだからな!」
「おやおや、バレましたか。いや ヒューバート国王から何年も前から頼まれていまして」
「あっはは!なにそれ。王子様とお姫様、婚約してたのに?」
「ヒューバート国王は、ローズさんはもう助からないと踏んでいたようですねぇ」
「はぁ…そうなんだよな。まったく…親父も、意外と薄情だぜ」
2人に愚痴を溢すフィリップだったが、もうその足はしっかりと地面を踏みしめて、確実に前へと進んでいるのだった。