第26章 眠り姫の物語
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大ホールで、アズールの威勢の良い声が響いた その時。
皆が居るホールの上階。その、とある一室で 彼は目覚めた。
「っ、…く、頭が…割れるみたいに痛ぇ…!まるで誰かから渾身の手刀を、延髄に叩き込まれて そのまま落とされたみたいに痛ぇ!」
フィリップ王子であった。彼は首の後ろに手をやりながら、割れそうに痛む頭をなんとか持ち上げた。
眠り姫ならぬ、眠り王子。
彼はまだ、自分がいかに重要な場面で眠りこけていたのか、気付いていない。しかし、すぐに察することとなる。
「っ!ローズがいない!」
彼は、ローズの私室に 彼女の姿が無いのを確認して狼狽えた。
誰かに連れ去られたのか?という不安と、もしや目覚めたのではないか?という期待。
そんな背反する気持ちで胸をいっぱいにした。
そして、ようやく気がつく。
下の大ホールが、人の気配で満ちている事に。
彼はドキドキと逸る胸を押さえる。そして階下へと続く大階段に向かって、足早に駆けていくのであった。