第26章 眠り姫の物語
「そうだったのか…。私は、無実の者を傷付けてしまったのだな。
それに関しては、どれだけ謝罪の言葉を並べても足る事は無いだろうが…
本当に、申し訳なかった」
「いや…。僕も、何の罪もないローズを、腹いせの道具にして呪ったのだ。僕に、そちらを責める権利などありはしない。
だが そうだな…もしも可能ならば いつかの機会に、本人に一言くれてやってくれるか。
まぁ 仮にそれが叶ったとしても、“ よいよい ” と笑い飛ばされて終わるのは目に見えているのだがな」
「そうか…。分かった、ぜひそうしよう」
ずっと息を殺して見守っていた人々は、やっと息をついた。
自分達の長である王がマレウスに謝罪しているのを目の当たりにした。それを見とめたのと同時、ようやく自分達の過ちにも気付いたのである。
今までマレウス達を、得体の知れない生命体だと敬遠し、畏怖の対象としていた事。それどころか、彼らこそが悪だと決め付け、一方的に滅ぼされるべきだと思っていたのだ。
皆、真実を知った この時この瞬間、己の無知さと愚かさを恥じたのだった。
そうなれば、姫とマレウスの仲を反対するムードも和らぐというもの。
そんな中、元気な第一声を発したのは…
ヒューバート国王であった。
「まさか!そんな事実があったとはなぁ!いやいやこれは本当に驚きだ。
それにしてもステファンよ!こうなってくれば…この城を襲撃した真犯人は、絶対に捕らえて処罰せねばなるまいな!」
「そ、そうだな。其奴らの所業こそ、私達が憎み合う事となった発端。このまま のさばらせておく訳にはいくまい。
ローズ、マレウスよ。その悪人に心当たりは無いのか?」
『え、えぇっと、それは……』
「ふむ…さて、どうしたものか」
ローズとマレウスは、恐れていた事態の到来に頭を抱えた。
この群衆の中に紛れているであろう本人達を、まさか突き出すわけにはいかない。
と、そんな時。この大ホールに高らかと声が響き渡った。
「それについては、この私から説明させていただきましょう!」
アズール、その人である。